日米科学技術協力事業核融合分野の炉工学研究

 日米科学技術協力事業は、日本と米国との間で行われる共同研究等の協力事業です。核融合のみならず、高エネルギー物理学や宇宙、脳研究などの分野で1980年代から実施されており、「エネルギー及びこれに関連する分野における研究開発のための協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」および、「科学技術における研究開発のための協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」に基づいて実施されています。
 核融合分野においては、プラズマ科学や慣性核融合に関する共同研究なども行われており、核融合工学分野では1982年から開始されたRTNS-II計画から途切れることなく継続されています。核融合科学研究所は研究所の設立後最初に開始されたJUPITER計画から中心的な役割を果たしています。炉工学分野で重要な研究トピックに関する共同研究をプロジェクト単位で継続的に実施しています。本事業では、主に日本側が研究者を派遣し、米国側の固有設備を利用した実験を進めることを主軸としています。

RTNS-II計画 (1982-1986)

 RTNS-II(Rotating Target Neutron Source -II)計画は、日米共同での照射研究プロジェクトの第一期として発足し、核融合炉材料に対する高エネルギー中性子の入射の影響の理解を目指して実施されました。加速器で生成した核融合中性子を使った照射実験を行い、核融合中性子特有の現象に関わる研究を行いました。

FFTF/MOTA計画 (1987-1994)

 FFTF/MOTA(Fast Flux Test Facility / Materials Open Test Assembly)計画では、核融合炉材料への核融合炉実規模の中性子重照射効果に関する研究を行うため、FFTFを用いた中性子重照射実験が行われました。MOTAはその際利用された照射用リグの呼称です。

 JUPITER計画 (1995-2000)

 JUPITER計画(Japan-USA Program of Irradiation /Integration Test for Fusion Research)では核融合炉材料の中性子照射下での動的な特性変化や新材料への照射影響に関わる研究が進められました。また、以後の照射研究に資する、その場測定、温度変動照射、スペクトル調整照射などの技術開発も行われました。

JUPITER-II計画 (2001-2006)

 JUPITER-II計画(Japan-USA Program of Irradiation /Integration Test for Fusion Research-II)はこれまでの日米共同事業の成果を受け、先進的ブランケット開発につながる低放射化材料と、ブランケット増殖材(燃料である水素の同位体の生産を担う)と冷却材の組み合わせたシステムを目指した、要素技術と照射挙動の研究を進めました。

TITAN計画 (2007-2012)

 TITAN計画(Tritium Irradiation and Thermofluid for America and Nippon)では、1.核融合炉システム中の水素同位体と熱流動 2.核融合炉材料の中性子照射効果 3. 炉設計を目指した核融合第一壁・ブランケットの統合モデル構築、の3つの主軸となる研究が設定され、種々の実験が行われました。

PHENIX計画 (2013-2018)

 PHENIX計画(PFC evaluation by tritium Plasma, HEat and Neutron Irradiation eXperiments)では、1.Heガス冷却ダイバータの設計を目指した熱伝達係数の取得と性能改善 2.タングステン材料の熱負荷環境での健全性評価 3.ダイバータ温度条件でのタングステン系材料中の中性子照射影響の解明とデータベース化、の3つの主眼のもと研究が進められました。

FROTIER計画 (2019-)

 FRONTIER計画(Fusion Research Oriented to. Neutron irradiation effects and Tritium behavior at material. IntERfaces)では、核融合原型炉開発に向け、固体ダイバータ・液体ダイバータの2つのコンセプトについて、高熱負荷・中性子照射・プラズマ照射の複合環境での成立性・健全性・安全性に関わる界面反応の理解を目指した研究を実施しています。