液体ブランケット研究
核融合炉の炉心プラズマを取り囲むように設置される金属壁である”ブランケット”は、(1) 発電のための熱の取り出し、(2)水素同位体燃料の生産、(3)放射線遮蔽、の三つの役割を担います。炉工学研究プロジェクトでは、燃料生産能力を持つ溶融塩や液体金属をブランケット内部に循環させることで高温・高効率の発電を目指せる”液体ブランケットシステム”の開発研究を行っています。核融合炉の強磁場環境下におけるこれら液体の流動及び伝熱特性、液体中で生産される水素同位体燃料の輸送及び回収、材料の共存性(材料腐食)等についての評価実験を進めるとともに、新しい材料や手法を適用した課題の解決を進めることで、安全かつ長寿命の液体ブランケットシステム確立を目指しています。
図1は、液体ブランケットシステムに必要となる技術の開発研究のために、大学等の研究グループとの共同研究プラットフォームとして運用している熱・物質流動ループOroshhi-2(Operational Recovery Of Separated Hydrogen and Heat Inquiry-2)です。Oroshhi-2は、溶融塩(FLiNaK(フリナック))と液体金属(LiPb(リチウム鉛))を個別に流動させることができるツイン・ループの循環システムであり、ブランケット流体としての溶融塩及び液体金属の特性を比較研究するとともに、各流体に固有の課題解決のための研究を推進しています。特に、最大3T(テスラ)の磁場を発生させることが可能な超伝導マグネットを備えており、核融合炉の強磁場環境を模擬した流動・伝熱特性評価や制御の実験が可能なほか、水素同位体燃料の輸送・回収、不純物の除去、熱交換等、必要とされる要素技術の試験体を同じループ上に同時に設置することにより、将来の核融合発電炉と同様の循環系におけるブランケットシステムの統合技術試験を実施することが可能となっています。
図:熱流動ループOroshhi-2の外観。液体金属(LiPb)と溶融塩(FLiNaK)の各ループからマグネット部に配管を接続して試験が可能です。腐食や伝熱実験のために簡便に交換可能なテスト用区間をそれぞれ持っています。